2012年1月6日金曜日

■シンポジウム『大阪の転機に、アーツカウンシルを』

■シンポジウム『大阪の転機に、アーツカウンシルを』

昨年12月、橋下徹大阪市長が言及した、「文化行政での公金投入の在り方を検討する」「アーツカウンシルの導入を指示」という新聞報道を受け、先進諸国で導入され、さらに東京都が4月に準備会を設立するアーツカウンシルについて紹介。その役割と成果を報告するとともに、大阪で活躍する文化関係者によるシンポジウムを開催します。(※企画趣旨詳細は最後尾にて)

日  時:2012年1月9日(月・祝) 18:30〜20:30
会  場:大阪市中央公会堂 小集会室(大阪市北区中之島1-1-27 TEL 06-6208-2002)
料  金:無料
主  催:大阪でアーツカウンシルをつくる会
共  催:NPO法人アートNPOリンク

内容・スケジュール:(敬称略)
開催挨拶|主催者挨拶 甲斐賢治(大阪でアーツカウンシルをつくる会世話人)

基調講演|「アーツカウンシルとは」 吉本光宏(ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室長)

報告|大阪でアーツカウンシルをつくる会世話人会による報告
「大阪で検討されるアーツカウンシル」 山口洋典
「大阪の地域の現場から考える」 上田假奈代

リレートーク|各12分×5名(順不同・予定・依頼中)
・服部滋樹(graf代表、クリエイティブ・ディレクター)
・原 久子(アート・プロデューサー)
・大谷 燠(NPO法人ダンスボックス代表、ディレクター)
・景山 理(シネ・ヌーヴォ 支配人)

予約・問合せ先:(当リリースの問合せ先はこちら)
大阪でアーツカウンシルをつくる会・シンポジウム事務局
TEL 090-7360-6783(上田)   E-mail osaka.atsukan@gmail.com


登壇者プロフィール:(敬称略/順不同/一部)
吉本光宏 (よしもと・みつひろ)
ニッセイ基礎研究所 主席研究員・芸術文化プロジェクト室長
1958年徳島県生。早稲田大学大学院修了(都市計画)後、社会工学研究所などを経て、89年からニッセイ基礎研に所属。文化施設開発やアートワーク事業のコンサルタントとして活躍する他、文化政策分野の幅広い調査研究に取り組む。現在、文化審議会文化政策部会委員(04年~)、東京芸術文化評議会専門委員(07年~)等。主な著作に「再考、文化政策(ニッセイ基礎研所報)」他。

服部滋樹 (はっとり・しげき)
クリエイティヴ・ディレクター。graf代表。1998年大阪、南堀江にショールーム“graf”をオープン。2000年“decorativemode no.3”設立。同年、中之島に移転し、“grafbld.”を設立。オリジナル家具の企画・製作・販売、店舗・住宅・建築設計、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、ブランディングに至るまでプロジェクトごとに幅広い活動を行っている。http://www.graf-d3.com

大谷燠 (おおたに・いく)
DANCE BOX Executive Director.1952年大阪生、神戸市在住。’96年にDANCEBOXを立ち上げ、多数のコンテンポラリーダンスの公演を開催。’02年NPO法人化し、大阪市との公設置民営劇場「Art TheaterdB」開設、’07年閉館。’09年4月、神戸市との協働で「ArtTheater dB神戸」開設。Asia Contemporary Dance Festivalなど国際交流事業やアートによるまちづくり事業も多数行う。
神戸大学、近畿大学非常勤講師。「生きるための試行~able art on stage~」(フィルムアート社/共著)

原久子(はら・ひさこ)
大阪電気通信大学教授、2005年より現職。1980年代後半より関西を拠点にアート作品(現代美術、メディアアート)、作家紹介、その周辺状況を伝えることを様々なメディアを通して行なう。90年代より展覧会、ワークショップ、アートイベントの企画運営に携わる。00年代よりアジア地域のオルタナティブな芸術文化活動の調査研究を続ける。共編著「現代美術館学2」他。共同企画展「六本木クロッシング2004」「あいちトリエンナーレ2010」他多数。

景山理(かげやま さとし)
1955年、島根県生まれ。74年より、自主上映グループ「シネマ・ダール」を主宰し、大阪・京都でさまざまな映画を上映。76年より全国自主上映組織体「シネマテーク・ジャポネーズ」の発足にあたって大阪代表として参加。84年に月刊・映画専門紙「映画新聞」を創刊(毎月1日発行)。映画新聞は、91年度日本映画ペンクラブ奨励賞、大阪府文化助成などを受け、99年11月の休刊まで156号を発行。97年1月、市民から2100万円の出資金を得て「シネ・ヌーヴォ」を設立、ロードショーを開始。99年10月には、宝塚市売布神社駅前「ピピアめふ」内の日本初の公設民営映画館「シネ・ピピア」の支配人に就任。現在、シネ・ピピアとシネ・ヌーヴォの支配人。

甲斐賢治(かいけんじ)
せんだいメディアテーク 主幹/企画・活動支援室 室長
大阪生まれ。おもに地方行政の文化施策に従事、企画、運営などをおこなうとともに、アートやメディアにまつわる複数のNPOに所属、社会活動としてのアートに取り組む。2010年春より現職。

山口洋典 (やまぐち・ひろのり)
1975年静岡県磐田市出身。立命館大学・院で環境システム工学を学ぶ。在学中の震災ボランティアやCOP3でのNGO事務局職員の経験をもとに、きょうとNPOセンターの設立に参画。現在常務理事。2006年4月には大阪・天王寺の浄土宗寺院、應典院主幹ならびに應典院寺町倶楽部事務局長に着任。得度して浄土宗の宗徒となり、お寺と社会との関係づくりを担う。2006年10月より同志社大学の教員を兼ねつつ、その後2011年4月より立命館大学の教員に。

上田假奈代 (うえだ・かなよ)
1969年生まれ。3歳より詩作、17歳から朗読をはじめる。92年から障がいをもつ人や社会人、子ども対象の詩のワークショップを手がける。01年「詩業家宣言」を行い、さまざまなワークショップメソッドを開発し、全国で活動をつづける。03年ココルームをたちあげ「表現と自律と仕事と社会」をテーマにホームレスや高齢者、ニート、教育など社会的な課題にも取り組む。西成区釜ヶ崎で「インフォッショップ・カフェココルーム」と「カマン!メディアセンター」を運営。NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)代表 大阪市立大学都市研究プラザ研究員
http://www.cocoroom.org


■『大阪の転機に、アーツカウンシルを』企画趣旨

ー大阪にアーツカウンシルをー
 2011年の暮れ、大阪で芸術文化活動に取り組む私たちにとって、驚きのニュースが飛び込んできました。それは、12月19日に就任した橋下徹・大阪市長が、12月24日の大阪市戦略会議において、「運営補助金を見直して、専門家でつくる組織『アーツカウンシル』の導入を指示した」(12月24日・産経新聞)というものです。橋下市長は既に就任前よりアーツカウンシルについて言及し、「文化行政での公金投入の在り方を検証する予定」(12月9日・毎日新聞)といった報道もなされていました。民間の立場で芸術文化活動に取り組む私たちは、この英断と言って憚ることはない指示を、積極的に歓迎したいと考えています。
 大阪市戦略会議での指示以降、各種の報道がなされているとおり、大阪における広域的な文化芸術政策の展開において、アーツカウンシルは不可欠な組織です。なぜなら、高度情報化と超少子高齢の社会が到来した今、施設と組織と事業の垂直統合型の施策展開ではなく、多様な財源と多彩な人材によって、多角的な活動が展開される必要があると考えるためです。アーツカウンシルとは、もっぱら芸術文化の振興のために、芸術家と鑑賞者のあいだに立つ存在として一定の役割を担うとともに、大阪にとって不可避な都市間競争にも寄与するものであり、都市の持つ表現力を開発・育成することで、自治のための基盤整備に資することができます。ただし、そのためには周到な戦略のもと、政策のコントロールとコーディネートが必要とされます。

ー民意の象徴としてのアーツカウンシルー
 そもそもアーツカウンシルの先例として知られるイギリスでは、経済学者・ケインズによる「アームズレングスの法則」に基づき、政府から独立した存在でありながら公的な組織であり、対象に手が届く適度な距離を保ちながら適切に介入する、そのため財政拠出は行うものの、予算の執行権は独立した機関に保有されているという、極めて民度が高い組織として位置付けられています。この点一つを取ってみても、大阪におけるアーツカウンシルの導入は、今次の大阪府・市のダブル選挙において、民意の象徴として語られる「変化」への期待に見事に応えうる戦略であると断言できるでしょう。事実、橋下市長の「独立した立場で補助金の審査や事後評価などを担当する専門機関『アーツカウンシル』を設置」(12月24日・産経新聞)との報道からも、文化庁や東京都で設置が検討されてきたアーツカウンシルを、早急に大阪に導入すべしと、前向きの姿勢をみせています。さらに、「府市でやっていきたい」(12月24日・朝日新聞)と添え、「大阪府・市の芸術文化に関して意義や採算性を審査する独立の専門機関」(12月24日・読売新聞)としてのアーツカウンシルの姿が明示されていることからも、より専門的で効果的な施策が実施されるだろうと、今後の充実した自治体文化政策への期待を抱かざるを得ません。

ーピンチはチャンス!大阪の転機に、アーツカウンシルをー
 大阪市では2007年4月、今後の都市経営の基本戦略として「大阪市創造都市戦略Ver.1.0」がとりまとめられ、創造性に富んだ市民や企業が活発に活動し、その活動に惹かれてさらに人や企業が集まり、新たな都市活力創出の好循環を生み出す大阪独自の「創造都市」の方向が示されていたものの、残念ながら、民間の立場から見てみれば、そのような都市となった実感を抱くには至っていません。そのため、さまざまな分野の文化活動に携わる私たちは、2007年より「大阪でアーツカウンシルをつくる会」を設立し、公民協働で芸術文化政策を協議する組織の実現に努めてきましたが、むしろ他地域からの関心ばかりが高まり、特に大阪市域での実現に対しては決して明るくない見通ししか抱くことができませんでした。とはいえ、今回の大阪市戦略会議によって、「大阪市芸術文化振興プラン」(2011年3月)が大幅に見直されるとすれば、橋下市長の知事時代に大阪府が策定した「大阪文化振興新戦略」(2010年3月)との接合も図られることと思われます。これにより、中長期的な視点に立つ「アウトカム指標」の活用などにより、定量的な評価に基づく経済性・効率性の評価と、定性的な評価に基づく有効性や妥当性の評価などにより、地域の文化を育み、人々が働きがい、住み応えを実感できる社会の創造が展望できるでしょう。
 そこで私たちは、新春早々ではありますが、現在の大阪における民間による芸術文化活動の状況を見つめ、これからの大阪における芸術文化の可能性を見据えるべく、小さな集いの機会を設けることにいたしました。そして、その可能性を広げる存在がアーツカウンシルであるという前提に立ち、地域に根ざした芸術文化基盤の創造の好機を逃さぬよう、緊張感のある議論を行いたいと考えています。既に確認されている「文化団体への助成を一括して審査、評価する第三者機関」というアーツカウンシルについて、実際に「行政から一定の距離を置き、芸術の専門からが助成を審査し、事後評価も行う」こと、それが果たして、大阪の新戦略の中核の一つとなりうるのかどうか。誰もが「心豊かな活力ある社会の形成」(2001年・文化芸術振興基本法)の担い手の一人となりうる存在であるという自覚を携えていくためにも、本件についてご関心をいただけることを願っております。